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ペット撮影カメラマンの犬写真&フリーペーパー「犬の写真集」

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英国人とペットの固い絆について


イギリスに来る前からずっと心の奥底にあった疑問。「何故、イギリスの犬は賢いのか?」
素直に体験してみたいと思い始めてから、英国にてその真実を確認する事は私の人生の一部でした。

「しつけが素晴らしいから」、「公園もたくさんあるし、犬の環境が恵まれている」、「英国人の誇り高きプライドがペットに影響している」、「動物保護の意識が強いからペットも賢くなる」、「昔から人間と働く犬が多いから」などなど…。様々な噂が論じられる中、実際の答えとは如何に。私自身がイギリスに来た事による大きな財産は、上記に挙げた全ての要因がペットの賢さ、ペットと人間の絆を強くしているという事に影響していると気付かせてくれた事です。

「動物愛護先進国であるイギリスでは、何故殺処分の数が日本に比べ圧倒的に少ないのか?」

年間28万頭殺処分されている日本と年間1万頭に満たない英国。同じ先進国の間にこれほどの違いがある。そしてその一番の要因は、「人間とペットの絆の深さ」だとイギリスに来て、とことん実感してきました。殺処分の現状は、「捨てられた」という単純な要因だけでは実はない。そこにはペットビジネスを取り巻く日本独自の問題も深く関わっている。ペットと関わる英国人は、プロフェッショナル・アマチュア問わず「ペットオーナー」である事に強い誇りを持ち、また同時にペットと自身の絆をとても気にしています。
 
街中をノーリードで歩く犬を発見した時、イギリスではそれは自然な姿である事が多いようです。日本では「野良犬」だと思われ、皆犬の道をあけて歩くか、もしくは可愛がって勝手に触って噛まれてしまうという事も考えられます。その為、日英間では「犬」という動物に対する意識も大きく違います。勿論「犬は外で飼うもの」というアジア独自の考え方にも要因はあるけれど、それ以上に「犬」という動物を通しての成功例があまりにも少ないと考えられるのです。

忠犬ハチ公や南極物語の様な昔の話には、日本犬の素晴らしさが描かれていますが、日本で現代におけるペットとしての日常の犬達は、それは大変な想いをしていると思います。また、そういった環境が原因で、より一層彼らのストレスや問題行動に発展していると考えられ、明らかに成功例よりも失敗例が勝ってしまうようなイメージが、日本での「犬」という動物に対する意識だと言えます。

英国人はペットに関して寛大だが、逆に言うと依存しているわけでもない。勿論、自分達のペットに誇りを持ち、強い愛情は持っているがそれは過剰ではない愛し方なのです。「犬」としての生き方を尊重し、「犬らしさ」を大切にしている。それが英国人と犬との固い絆を育んでいる。と、私は常に意識させられてきました。

これらの考え方は日本人であり、日本で犬と生活してきた自分だからこそ感じられた事だと思います。それだけに動物好きの日本人がイギリスに来るとショックを受けることが非常に多いのです。この国では、単なる「動物が好きという表面的な愛護」だけでは済まされないという意識があります。そして、例えペットを飼っている人達が「単純な動物好き」だとしても、それをプロフェッショナル達が許さないように常に「責任・誇り」というものを指導し続けている。そして、それが日本と英国のペット産業・環境を取り巻く差を生む、一番の要因なのかも知れないのです。

英国人から学ぶペットとの生活において、最大のメリットは「犬」を「犬」として扱うことだと私は考えます。溺愛するわけではなく、家族の一員・もしくは人生のパートナーとしてしっかりと責任を持って、また彼らが言葉を話す事が出来ない動物だという事を十分に知った上で彼らを生活の一部に置く事。

日本人が見習うべき真のペットとの絆の作り方は、「しつけ・トレーニング」や「公園などの生活環境」などという表面的なものではなく、心の奥底から必要としている「ペットと楽しく暮したい」と願う気持ちであり概念なのだと思います。

英国風という言葉の格好良さに騙されるだけでなく、動物を飼う事の厳しさと楽しさの両面を理解した上でイギリスという国から学ぶペットとの付き合い方は大変勉強になります。是非、日本の皆様にも(特にプロフェッショナルや動物愛護に携わる方達に)そういった意識を持って暮して欲しいなと切に願います。今後はこの素敵な概念を、出来るだけ多くのペットの飼い主達と共有していきたいですね。

Dog Behaviourist 下村拓哉 http://www.onebrand.jp/2010/06/d_/2207.php


ONE BRAND ホームページより抜粋
by dog-2photo | 2010-09-06 11:39 | 犬のあれこれ